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みんなのエッセイ

たった一円のサービス 鳥越九郎

 中華料理店のレジ。ある土曜日の昼下がり6~7名で、わいわいがやがや仕事仲間と
昼食をしての帰り時、サイフ係りを買って出た。

仲間は、『ごちそうになりマ~ス』と散々伍々店を出て行く。
若いおネエちゃんがレジに立っていた。伝票を受け取り『チョンチョンチョン、チ~ン』
『消費税を入れて5,880円になりま~す。』

そうそう、バラゼニがいっぱいあったっけ。1000円札はないから10,000円札と、

『ちょっとまって、こまかいのあるから…』

とサイフをまさぐると100円玉や10円玉、1円玉がザクザク。
870円までは500円玉・100円玉3枚と50円玉や10円玉をを動員してやっとそろった。

あと10円だ!

あれ?おっと、5円玉があった。エ~と、エ~と、1円玉1枚、2枚…4枚!あと1枚!
なのにその1枚がない。
小銭はもうカラ!うしろを振り返って見ても仲間はもう誰もいない。よわったなぁ…あと1円なんだが。

『悪いけど1円だけまけてくれる?』

当然『いいですよ』と言ってくれると思っていた。他の店でもよく10円や、7,8円のお釣りは受け取らずに帰ることが多い。中には寄付金ボトルのようなものを置いてあるところもある。

『申し訳ございません。5880円です。』『10,879円からお預かりします。』
とそのおネエちゃん、事務的にサッサとレジを打つ。

『何だい、1円サービスしてくれっていってんだよ!ダメなのかい?』
こっちもムカッとしたが、相手はアルバイトかパートの身分なのか融通が利かないようだ。
『4,999円のおつりです!』
と言って私の出した小銭はそのままに新しく4000円と500円玉・100円玉・と50円玉・10円玉・5円玉と
4円をかぞえて私に渡そうとする。
『たった1円がどうにもならないのかい?サービスだろうが…』

『店長を呼べ!』と言いたかったが1円で騒ぐのもおとなげないと思い、ぐっとこらえた。
外では仲間も待っているだろう。
『たった1円もサービスできねえ店なんかに二度と来ねえよ!』
と捨てゼリフをはいて1000円札4枚と15枚の硬貨をわしづかみにして玄関を出た。
腹が立つ。

いくらレジでも、使用人だとしてももう少し融通を利かすべきだろう。
ビタ1文いや、ビタ1円たりとも金額が合わないと叱られるのだろうか。
『サービス』とは何だろう。
確かにサービスのつもりで支払い金額をまけると、際限がなくなるかも知れない。
悪意のある客があれば、1円まけてくれたらその次は10円、50円と言い寄るかも知れない。

いくらまでがサービスなのか判らなくなってくる。だけど、だけど、やっぱり1円だよ!と思い返す。

せっかく空っぽになって喜んだ古びた財布は、バラゼニが前よりももっと多くなり
パンパンになってしまった。
それ以上に、この店の案外悪くないと思って食べていたラーメン定食の味が
急にまずかったように思えてきた。
やっぱりこの店には二度とこないだろうな。